プリンセスフォームになれなかったキャルの成長譚。運命が再びあの人と再会させる。キャルは無事に変身できるようになるのか!?
公開:2021年01月05日 (最終更新:2021年02月25日)
皆さん、こんにちは。もりすかだ。
いつも読んでくれてありがとう。
前回は主人公がペコリーヌたちと学校に通う話だった。着々と明らかになっていく【レイジ・レギオン】のメンバーとその目的。
プリンセスフォームがないと全く歯が立たなかった相手だが、主人公との絆を深め、だんだんと対抗できるだけの人数が揃ってきた。【レイジ・レギオン】の野望を食い止められるのか。そして、クリスティーナに助力を求めに行ったユイたちはその目的を果たすことができるのか。
今回は最後の「七冠」も出てきそうで、楽しみでならない。それではさっそく今回の話を見ていこう。
第1話「不穏な朝」
希留耶は冴えない顔をして、とぼとぼと歩いていた。本来なら学校のある時間。だけど、希留耶は一人で目的もなくただ街を彷徨っている。行きたかった沖縄への修学旅行。行けると勝手に思っていた。旅行の積立金なんて希留耶の親が貯めているはずもないのに、勝手に浮かれて、期待して、調子に乗っていた。
自分のバカさ加減に乾いた笑いがこみ上げてくる。そして、次の瞬間には「もうイヤ」と感情だけが、何度も何度も口から零れていく。自分を抑えきれなくなった希留耶は、悲鳴のような叫びを上げた。
朝の日差しを感じて、キャルは目を覚ます。なんだか変な夢を見た気がするが思い出せない。こんな夢を見るのも、数日前にペコリーヌとコッコロからされたおかしな質問が関係しているように思えてならない。こことは違う「あちらの世界」の話。しかも、この世界の方が作られた偽りの世界だ。
信憑性なんてまったくない、ばかばかしい話だとしか思えない。だけど、笑い飛ばせないのは、主人公と陛下が同じような話をしているのを聞いたからなのか。そこまで考えてキャルは小さく息を吐く。もしも、あっちの世界が本当にあるなら、裏切り者の大罪人じゃなくて、もうちょっとくらいマシな人生であって欲しいと……
キャルが掃除をしながら、そんなことを考えている頃、主人公はコッコロとシェフィを連れて、街に買い出しに来ていた。大セールが行われいるらしく、お客もお店もスゴい賑わいだ。その中で新しく開店した店にコッコロが興味を惹かれる。品揃えもよく、その品質も高い。おまけに超格安ときたら、利益が出ているとは思えない。
世間話を交えながら店主に話を聞いてみると、何でも卸しを行う問屋ギルドが気前よくサービスをしてくれているとのこと。安く仕入れられるから、格安にしても十分利益が出る。至極当然な話だった。この辺りを仕切っているのはアキノの率いる【メルクリウス財団】
しっかりとした経営を行うギルドが、謎の大盤振る舞いとは珍しい。何か心境の変化でもあったのかと思ったら、どうやら別のギルド【アマルガム貿易】から仕入れたようだ。聞いたこともないギルド名に、コッコロたちは首を傾げるだけだった。
第2話「商人の心得」
【メルクリウス財団】のミフユは露店に並ぶ格安商品に感激の声を上げていた。その隣では酒好きのユカリが、水と変わらない値段で取り引きされている酒を呑みまくって、いい感じに酔っ払っている。
完全に格安なモノに釣られ舞い上がっている二人に、タマキは抗議の声を上げた。アキノたちがここにやってきたのは、格安商品を満喫するため、ではなく、市場調査だったからだ。
格安の【アマルガム貿易】によって、取引先を全部奪われた形になっている【メルクリウス財団】だったが、市場を見て驚きが隠せない。今まで聞いたこともないギルドが、ここまで大規模な割引戦略が取れるほどの影響力を持っている。にわかに信じられないことだ。
市場調査をすませ、戻ってきたアキノたちは思わずため息を吐く。コスト削減のために粗悪な材料を混ぜていたりするような、悪徳な感じも全く見受けられなかった。しかも、開店、閉店セールのような何か特別というわけではなく、すでに半月以上も通常運転で安売りを続けている。何か裏があるのは違いない。
だけど何も証拠を掴めず、売上と客を奪われ、【メルクリウス財団】も、解散の危機に追い込まれていた。一刻も早く【アマルガム貿易】の不正を見つけて、経営を立て直す必要がある。倒産の危機を脱するには、もうなりふり構っていられなかった。
だが、そこにさらに悪いニュースが入ってくる。今度は【アマルガム貿易】直営のフランチャイズ百店舗が同時出店するらしい。アキノたちは思わず大きな声をあげた。
第3話「迷い猫、迷い竜」
【リッチモンド商工会】のギルドマスターであるクレジッタは、怒りをまき散らしながらペコリーヌへの不満を言い続けていた。冤罪をでっち上げたり、毒を盛ったり、何をしてもいいから彼女を陥れたい。
しかし、相手はこの国の王女様。下手なコトをしたら、一発で首が飛ぶのは確実だ。なにかいい案はないかと思案していると、秘書が話しかけてくる。
ペコリーヌのことよりも、街を騒がしている【アマルガム貿易】についてだった。自分たちの得意な建築業にはまだ影響はないが、その他の事業では今期の大幅な減益は避けられない。強引な手を使おうにも、この間の【レイジ・レギオン】の件で使い物にならなくなっていた。
忌々しいことばかりにクレジッタが訝しんでいると、ゴウシン直属のギルド【黄金の手】がやってきて、至急宮殿まで出頭するようにクレジッタに命じてくる。
忙しいと断ろうとしてみたが、ゴウシンが不機嫌だったと念を押されてしまう。
キャルは暮れゆく夕陽を眺めて、大きなため息を溢す。
主人公を含めた【美食殿】のみんながキャルを元気づけようと、おいしい物をたくさん用意してくれて、なんだか居たたまれなくなって、飛び出してきたところだ。自分では落ち込んでいる素振りは全く見せていなかったのに、それが筒抜けだったことで情けなくなった。
執行猶予で、保護観察処分で、犯罪者で、プリンセスフォームにもなれない。情けないことだけたくさん増えて、自分はいったい、みんなの何なのだろう。考えれば考えるだけ、気持ちもどんどん落ち込んでいく。そんなキャルを見つけて話しかけたのはシェフィだった。
キャルがツラいのは、自分にツラいことがあるよりもツラいと言われて、キャルは少しずつ、自分の話をしていく。野良犬のように朽ち果てるだけだった自分を拾ってくれて、そばに置いてくれた陛下に感謝していたこと。それでもそれを裏切って、主人公たちについたこと。自分は本当に最低な人間だと思っていること。
話を聞いて、シェフィは分からないと答える。記憶が戻ってないとは言え、シェフィは陛下を殺そうとしたし、七冠であるラビリスタやネネカにも敵意を見せていた。もしかしたら、主人公の敵だったかも知れない。だから、自分だけは絶対にキャルを最低だなんて言わないとシェフィは言葉を紡ぐ。
記憶を取り戻すことでイヤな事を思い出すかもしれない。それでも、シェフィは記憶を取り戻そうと頑張っている。シェフィに心を揺れ動かされていると、一人の女性ホマレが見透かしたことを言って話しかけてきた。
第4話「ホマレの誘い」
一週間前――
ギルド【ドラゴンネスト】のカヤとイノリは悲鳴をあげる。笑顔で無茶な修行を続けるホマレに耐えられなくなっていた。得意分野だけでなく、不得意分野まで無理やりに押しつけられるのが、たまらなくイヤなようだ。
こんな修行なんて意味がないと二人がぼやくと、ホマレは苦手なこともできないとこれからの戦いについていけなくなるよと二人を宥める。しかし、誰と戦うのか、何のために戦うのか、いままで教えてもらったこともない。やる気なんて出るわけもないのだ。
そんな三人の話を隠れて聞いていたのはランファ。視線に気がつき、ホマレが彼女に声をかける。
ランファはおずおずしながら出てきたが、ホマレがギルドマスターで最後の七冠だと知ると、ドラゴンを呼び出し、いきなり襲いかかって来た。しかし、ランファの攻撃に怯むこともなくまるで子ども扱い。ホマレが圧倒的な強さを見せつける。
何度かつばぜり合いを繰り返し、不利だと悟ったランファが空間跳躍のマジックアイテムを使って逃げようとするが、効果は発動しなかった。
さっきまで魔法の修行と称して、カヤとイノリにさせていたのは空間跳躍を阻害する結界だったようだ。周到な用意をしたのは、全て【レイジ・レギオン】と遊ぶためにホマレ仕組んだもの。次いで言うと、ここに最後の七冠がいるとギャングを使って噂を流したのも、ホマレの企みだった。
逃げ場を失って焦りの色が浮かぶランファに、ホマレは「第二ラウンド開始」と笑顔で宣言する。そうして、想像を絶するような威力の魔法が放たれ、巨大な爆発音が木霊した。
一週間後、ランドソル下町地区。
【レイジ・レギオン】と遊んだホマレたちは、次に面白そうなことがありそうな、ランドソルにやってきた。そこでキャルと一緒にいるシェフィを見つけて、話しかけたというわけだ。
見知らぬ顔なのに訳知り顔で話すホマレに、キャルたちは動揺を隠せない。同じドラゴン族なのに、まったく情報がないシェフィにホマレは興味津々。
記憶を無くしていることを含めて、シェフィが自己紹介をすると、ホマレはシェフィを自分のギルドに勧誘してきた。ドラゴン族だけが集まる【ドラゴンズネスト】に入った方が、シェフィも助かることが多いはずと付け加える。
嬉しい提案であったが、【美食殿】を抜ける気はないシェフィは即断した。それでもホマレは困ったときはいつでも言ってきてとシェフィに優しく微笑む。そして、帰り際に覇瞳皇帝がいなくなった影響は、みんなが思っているよりも遙かに大きい。別の世界への穴が開くほどに、と意味ありげな忠告を残していく。
話も終わり、【美食殿】に戻るというシェフィ。しかし、キャルはまだ考えたいからその場に残ることを選んだ。シェフィを見送り一人になると、ふいに変な魔力が襲って来て、キャルは為す術もなくその場に崩れ落ちていく。
第5話「それゆけクレジッタ」
翌日・ランドソル繁華街――
タコ焼きがポップコーンのように消えていくペコリーヌの異常な食べっぷりに顔を青ざめさせているクレジッタ。
ペコリーヌが一緒に食べようと進めても手を伸ばそうとはしない。それもそのはず、クレジッタはゴウシンからペコリーヌの排他を依頼されていた。今まで様々な悪事を繰り返していただけに、ゴウシンの依頼を断れない。ペコリーヌを暗殺して、自分が犯人だとばれないようにしなければ、もう未来はないのだ。
クレジッタが用意したのは遅効性の毒。大量にあるタコ焼きにこーっそりと垂らせば、ミッションは成功する。実にイージーな依頼。だけど、実行しようとしても手が震えてしまう。思い悩んでいるクレジッタを見て、ペコリーヌはぺこっと頭を下げる。
まるで毒気のないペコリーヌにクレジッタは怒りを募らせていく。地獄のような日々を過ごし、ようやく今の地位に登りつめたクレジッタは、ペコリーヌが何の苦労もせずに今の立場になったと疎んでいた。そのため、ペコリーヌが何をしても癪に障ってしまう。なんとなく気まずくなったところに血相を変えた主人公たちがやってきた。
なんでも昨日の夕方からキャルが帰ってきていないとのこと。思い詰めた様子も見せていたので、放ってはおけずに探し回っているところだ。昨日の別れ際に無理やりにでも連れ帰らなかったことをシェフィが後悔している。話を聞いてペコリーヌもキャルを探すのを手伝うと告げた。
それを聞いてクレジッタは血相を変える。公私混同しすぎたとペコリーヌを責め立てた。しかし、キャルの失踪に【レイジ・レギオン】が絡んでいたなら、彼らを捕まえるための絶好の機会にもなるシェフィが進言。クレジッタはその意見を受け入れるしかなかった。
そんな時、近くを歩いていた見覚えのある人物が視線に止まる。ブタの獣人であるアゾールドだ。
相手も主人公たちに気がつくと、にこやかに挨拶をしながら近づいてくる。食事を楽しんでいるだけというアゾールドだったが、良からぬ事を企んでいるに違いない。【アマルガム貿易】の躍進やキャルの行方不明にも絡んでいる気がする。しかし、確証は得られず、兵を呼んでも被害が増えるだけだアゾールドに諭された。
そんなことよりも、別の趣向で戦おうとアゾールドはペコリーヌを相手に大食い勝負を仕掛けてくる。まさかの展開にみんなは声を揃えて驚いた。
その頃、キャルは見知らぬ場所で目を覚ました。みんなが心配していると出口を探そうとすると、誰がいることに気がつく。そこにいたのは、陛下こと覇瞳皇帝だった。
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